理不尽な病 ~アルコール依存症の夫と暮らして~

アメリカ人の夫との結婚生活15年。夫のアルコールの問題に悩まされて10年。アルコール依存症だと認識して約8年。健やかなる時も病める時も、死が二人を分かつまで、私はこうして地獄に付き合わなければならないのだろうか…? 遠い日本の親にも友達にも言えないこの苦しみを、どうかここで吐き出させて下さい。(2018年5月)

夫の断酒方法

夫の断酒が続いている。

信じられないことに、あの重度のアルコール依存症の夫が、2カ月近くもアルコールから遠ざかっている。

心配していた「35日の壁」もようやく乗り越え、今は一日一日を、どうにかサバイブしている。

 

リハビリ施設にも行かず、専門家の助けも得ず、断酒の薬も処方してもらわず、一時積極的に行っていたAAにも行かず、こんなに性格が難しい夫は、やっと自分に合った断酒方法を見つけたようだ。

 

あの夫が、断酒には不可欠だと言われている外部からの助けを得ずに、2カ月近くも断酒が継続できているということは、今までの経緯を振り返ると、奇跡に近いものがある。

 

夫に一体、何が起こったのだろうか?

 

これが断酒の助けになっているかどうかは分からないのだが、喫煙者だった夫は、煙草を吸うことをやめ、代わりに、JUUL(ジュール)を愛用するようになった。JUULとは、今アメリカで爆発的に流行っている、電子タバコのことである。そしてJUULをやるようになってもうすぐ2カ月、未だに再飲酒はしていない。実際、JUULを始めてから、飲酒欲求がなくなったらしいのだ。

 

これは単なる偶然なのかも知れないが、夫がJUULによって飲酒欲求がなくなったと思っているなら、そういう風に自分に暗示をかけ、断酒の助けにして欲しいと思っている。

 

夫が煙草と飲酒の関係性に気付いて来たのは、AAに行き始めてからだった。

喫煙者がマイノリティーになった今の時代、AAでの休憩時間中には、未だ沢山のAA参加者(アルコール依存症者)が外に出て煙草を吸っているらしいのだ。そのことに目を向け、飲酒者は煙草を吸う、または、煙草を吸うから飲酒する、という関係性で、禁煙すれば飲酒することもなくなるのではないか、と安易ながら考えたようだ。

 

実際、アルコールと煙草というのは、深く結びついているような気がする。

今はどうなのか分からないが、少なくとも私が日本在住だった頃は、バーなどのテーブルには灰皿が置いてあり、アルコールを飲みながら喫煙している人が当たり前のように沢山いた。

 

ちなみに、アルコールがある場所の雰囲気が好きだった昔の私が、当時よく一緒に飲みに行っていた女友達は、ほぼ全員が喫煙者だった。そして、私は生まれてこのかた、一度も喫煙したことはない。興味本位で煙草を吸ってみたい、ということさえ思ったこともないので、何が私をそうさせていたのかはよく分からないのだが、やはり根っこにある堅物な性格のせいだったのかも知れない。

アルコールも飲めない、煙草も吸わない当時の私は、もしかしたらそういう場所では少し浮いていたかも知れない。

 

話は戻るが、JUULをするようになってから飲酒欲求がなくなった、と自ら告白して来た夫は、本当に今のところ飲酒欲求を感じていないのだろう。それでも、JUULを始めてから一カ月程経った頃に、一度飲酒欲求に見舞われたことがあったらしいのだが、幸いアルコールを買いに行くこともなく、夫は落ち着きを見せている。

 

これが夫の心理的なマジックなどではなく、もしJUULで飲酒欲求がなくなった人が他にもいるとしたなら、例えばバイアグラが最初は狭心症の治療薬として開発されながらも、後に別の効果があったと発見されて今に至るように、もしかしたらJUULも後々、飲酒欲求がなくなる効果がある、と立証されることがあったりするかも知れない。もしそうなったら、あんな夫でも、JUUL効果の一端を担っているようで、被験者のように世の中の役に立っているかも知れない、と、ちょっと軽い妄想をしてみた。

 

JUULをやり始めて以来、あの重度のアルコール依存症の夫に、目立った飲酒欲求はないらしい。何が夫の断酒を助けているのか本当のところは分からないが、喜ばしいことであることには違いない。

 

夫がJUULを始めたのは禁煙目的であり、最終的な目標は、完全にJUULさえも止めることである。

 

断酒してくれるのなら、禁煙は二の次でいいと思っていた。

それが、禁煙することによって断酒が続いているから、このマジックがこれからも持続するよう、静かに見守っていきたい。

 

 

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