理不尽な病 ~アルコール依存症の夫と暮らして~

アメリカ人の夫との結婚生活15年。夫のアルコールの問題に悩まされて10年。アルコール依存症だと認識して約8年。健やかなる時も病める時も、死が二人を分かつまで、私はこうして地獄に付き合わなければならないのだろうか…? 遠い日本の親にも友達にも言えないこの苦しみを、どうかここで吐き出させて下さい。(2018年5月)

AA(アルコホーリクス アノニマス)

アメリカには様々な宗教があるが、夫は無宗教であり、atheist(無神論者)である。

夫の父や妹もatheist、そして夫の母、兄は敬虔なクリスチャン。片や神を信じていない父、片や神を信じている母、で、価値観の異なる両親が離婚に至ったのもうなずけるような話である。

 

そういう夫は、神だか、それに似たようなものが出てくるAAに参加することに、全く積極的ではなかった。                                                                                                                  

私はAAのことはよく分からないのだが、私も一度参加したことがあるAl-Anon(アラノン/アルコール依存症の家族の会)でも、何やら神のことを言っていたような気がする。ちなみに、信仰している宗教を持たない私は、夫と同じatheist の部類に入るだろう。(日本人の私は、大まかに言えば、仏教ということになるのかも知れないが。)しかしながら夫の親戚はクリスチャンが多いので、クリスチャンのイベントであるクリスマスやイースターは、私達も一緒にお祝いしている。

 

私が数年前にAl-Anonに行った時は義母も一緒だったのだが、酒飲みの義母はAl-Anonなどではなく、自分こそAAに行くべきなのに、アルコール依存症の家族という被害者面をしていたことで、私は不快な思いをしたことがある。グループによるのかも知れないが、私が行ったAl-Anonは全体的に悲しみや苦しみ、痛みの『負のオーラ』が漂い、とても精神的に疲れてしまった。だから、もうAl-Anonに行きたいとは思わなかった。本当は夫に暴言を吐いてしまうより、Al-Anonで自分の思いをぶつけた方がいいということは分かっているのだが、そういう過去の苦い経験により、私はそれ以来Al-Anonには行っていない。

 

こんな私が夫に対してAAに行って欲しいと願うのは自分勝手なことかも知れないが、何十年も断酒している方々が、未だに定期的にAAに顔を出しているという事実に、やはりAAの効果を信じるべきだとは思っている。

 

この夏、夫は一時、集中的にAAに通っていた。

ジーザス(神)の話をされても気にしない、そんな風に、夫は今まで否定し続けていたAAに通い始めた。

 

そんな夫がAAから足が遠ざかってしまったのには訳がある。

AAに行くと、アルコールのことばかりを考えてしまい、かえって飲みたくなるというのだ。

断酒して1年になるAA仲間が「飲みたい・・・。」と毎回涙を流して訴えるその姿を見て、自分もそれに感化されてしまい、それで何度かAAの帰りにウォッカを買ってしまったのだ。

 

もう私が何を言ってもダメだった。

AAに行ったら飲みたくなるから行かない方がいい、そんなことを訴える夫は、せっかくできた断酒仲間からも遠ざかり、AAに行くことをやめた。

 

今はJUULのお陰で断酒ができていると思っている夫でも、この先、何があるか分からない。再飲酒がある可能性は全くゼロではないし、むしろ、限りなく100%に近い確率で、早かれ遅かれ、夫は再飲酒する可能性の方が高いだろう。(そう思うことで、再飲酒時のショックを和らげようとしているのもある。)そうなったら、夫はまたAAに戻って行くかも知れない。でもそれはそれでいいと思っている。私だって、いつかまたAl-Anonに足を運ばざるを得ない日が来るかも知れない。

 

もう、何が正しくて何が正しくないのか、私には分からない。

断酒方法も、人それぞれなのかも知れない。

夫は何年も時間を無駄にして、試行錯誤しながら、自分に合った断酒方法を探っている。

 

 

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