不穏な日々
2019年、冬。
私と娘は、4年振りのお正月を日本で過ごしていた。
今回の滞在は2週間。年末年始で慌ただしいながらも、夫から解放されて、平和に過ごせるはずだった。
断酒がある程度継続できたアルコール依存症者なら、きっと誰もが一度は思うことなのだろう。
「ずっと断酒しているから、もう治ったんじゃないか?」
「一杯だけなら、飲んでも大丈夫なんじゃないか?」
そして私達が日本へ経つ少し前に、夫は見事、再飲酒してくれました。
一旦アルコール依存症になってしまうと、もう二度と普通の人達のように飲酒をコントロールすることができない。
それを十分分かっていたはずの夫は、ビール一口だけなら大丈夫なのではないかと、飲んでしまった。この期に及んで、まだそんなことを考えていたのか!と腹立たしくなったが、本人は、まだ飲酒を諦めきれていなかったのだろうか。
最初はビールから始まり、それからすぐにウォッカへと移行。止まっていたブレーキが壊れてしまったかのように、すぐにまた元の状態に戻った。
お決まりの離脱症状が終わる頃には、夫に愛想を尽かしつつ、私の心は日本に向かっていた。
いちいち夫の状態に振り回されて、自分達まで苦しむことはない。
年に数日間だけ、どうか、私達を夫から解放して下さい。
もうすぐ日本へ行くという開放感から、私は気持ちが大きくなっていた。
でも、やはり夫を一人残していくことには、大きな不安が残る。
夫が泥酔して近所に迷惑をかけたり、事故を起こしたりしないだろうか。
離脱症状が起こった時、一人で大丈夫だろうか。
火事を起こさないでちゃんと家を守り、犬達のご飯や散歩などの世話をしてくれるだろうか。
アルコール依存症の夫には、そんなことさえも期待ができない。
日本への里帰りという楽しい時でさえ、夫と離れていても、いや、離れているからこそ、私の心配事は尽きない。