理不尽な病 ~アルコール依存症の夫と暮らして~

アメリカ人の夫との結婚生活15年。夫のアルコールの問題に悩まされて10年。アルコール依存症だと認識して約8年。健やかなる時も病める時も、死が二人を分かつまで、私はこうして地獄に付き合わなければならないのだろうか…? 遠い日本の親にも友達にも言えないこの苦しみを、どうかここで吐き出させて下さい。(2018年5月)

セキュリティカメラが捉えたもの

我が家には、セキュリティカメラが数台設置してある。

防犯のためというより、昼間みんなが不在中に、犬達がどう過ごしているのかを見たいという、遊び心で設置したものだ。

 

犬達は、私達が外出から帰って来ると、必ずベイウィンドウ(出窓)に座って外を眺め、私達の帰りを待っている。

果たして私達が外出してから一日中ずっとそこにいるのか、それとも、私達が想像だにしていないことをしているのか、誰にも犬達の一日の様子は分からなかったのだが、カメラのお陰で、彼らの実態が判明した。

 

『彼らは、私達の不在中、ずーっとベイウィンドウに座って外を眺め、私達の帰りを待っている』

のだ!

 

目新しくもない発見ではあるのだが、カメラのお陰で、私は日本からも家の様子を確認することができた。

 

犬達のご飯やお水の有無のチェックをし、時々犬達にカメラ越しに話しかけて、反応を楽しむ。

 

当然、夫の様子も確認する。

 

最初の1週間は、私達の不在を利用し、リビングの家具を全部動かして、床を綺麗にコーティングする作業を甲斐甲斐しくやっていた。これから壁も、ペンキを綺麗に塗り直すと言う。

シラフの夫は、それはそれは、頑張って家のリノベーションに精を出していた。

 

そして2週間目。

実家の別の部屋にいた娘が、私にテキストしてきた。

「お父さん、飲んでると思う。変なテキストが沢山来るし、送られてきた動画も、声が酔っぱらってるし。」

 

娘がそう言うのなら、きっと本当に飲んでいるのだろう。

彼女も私同様、夫の飲酒を100%察知する能力を持ち合わせているのだ。

 

あれだけ、一口でも飲んだらまた堕ちて行くと学んだはずなのに、あの夫は、一体いつになったら飲まないでいられるんだろう!?

 

病気だから仕方ないとはいえ、つい、私もこの病気の知識がない人達が発してしまいそうなことを思ってみる。

 

スマホで家のカメラをチェックしてみた。

 

「ピーッピーッピーッ」

「ピーッピーッピーッ」

 

・・・!?

 

何やら警報器みたいなものが鳴っている。

 

え・・・火災報知器!?

 

それは延々と鳴り響き、そしてカメラは、泥酔してヨタヨタ歩く夫の、ゾンビのような姿を捉えていた。

 

とっさに、地元の消防署に国際電話をすべきか、どうすればいいのか、一瞬迷ってしまった。

 

私はすぐさまその映像を録画し、義父と義母にそれを送って事情をテキストした。

アメリカは昼の時間だったため、返事はすぐに来た。

そしてその直後にカメラをチェックすると、火災報知機の音は消えていた。

 

夫が単に、火災報知機を止めただけなのか、それとも、原因である何かもちゃんと消したのか、こちらでは分からない。

 

義父に、仕事が終わったら様子を見に家に行ってもらうようにお願いをした。

 

その後の義父の話によると、原因は、何か料理をしていたものが焦げてしまい、その煙に火災報知機が反応したらしい。

酔った夫は火(正確には電気)をつけたまま、そのまま眠ってしまったのだろう。

 

酔っ払いが料理をするのは、本当に危険なことである。

今までにも、飲んでいた夫がオーブンをつけっぱなしにして、そのまま眠ってしまったことがある。

 

料理だけでなく、真冬に犬を庭に出しっぱなしにして、本人は酔っぱらって眠ってしまったこともある。正確な時間は不明なのだが、もしかしたら4時間程、そのまま外に出しっぱなしにしていたのかも知れない。可哀想に、寒空の下で犬は一人で、ドアの前でずっと、扉が開くのを待っていた。(二匹のうち、一匹だけを外に出しっぱなしにしていた。)

 

他にも、酔っ払って普段しないようなことをして、迷惑をかけられたことは数知れず。

 

夫と離れて日本でゆっくり心と体を休めるのはいいのだが、そういう不在時の心配事が、日本にいてもふと頭をよぎる。

 

カメラは、他にも私に嫌なものを見せてくれた。

別々に家にやってきた義父と義母。

彼らは、靴を履いたまま我が家を歩き回っていた!

 

義父にそれをやられても、それほど怒りの気持ちは沸いて来なかった。私がいる時に、今までにも何度も土足で歩き回られたことがあるので、今更腹も立たなかった。

 

問題は、義母である。

私がいる時には、いつもちゃんと靴を脱いでくれていた彼女は、私がいないのをいいことに、靴を履いたまま歩き回っていたのだ。これには私は非常に腹が立った!私の気持ちを尊重してくれず、私がそこにいないのをいいことに、靴を脱がないだなんて!思わず、カメラ越しに「Take off your shoes!!!(靴脱いで!)」と叫びそうになった。でも、後々また面倒なことになるのは避けたかったから、結局私は何も言わなかった。カメラがなければ知り得なかったことではあるし。

 

そんなこんなで、今回の日本滞在中にも、アメリカにいる困った家族達は、地球の反対側から私をハラハラドキドキ & イライラさせてくれた。

 

 

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