理不尽な病 ~アルコール依存症の夫と暮らして~

アメリカ人の夫との結婚生活15年。夫のアルコールの問題に悩まされて10年。アルコール依存症だと認識して約8年。健やかなる時も病める時も、死が二人を分かつまで、私はこうして地獄に付き合わなければならないのだろうか…? 遠い日本の親にも友達にも言えないこの苦しみを、どうかここで吐き出させて下さい。(2018年5月)

告白

私は去年の秋あたりから、徐々に、ほんの一握りの人達だけになのだが、信頼のおける友人達に夫のことを話し始めた。

話せるようになってきたのは、夫の状態が少し落ち着いてきたからだ。

これが一年前だったら、苦し過ぎてまだ話すことはできなかった。

 

今振り返ってみると、夫の状態が一番酷かったのは、2016年の暮れ~2018年の夏にかけてだった。今でも夫は問題を抱えており、夫の病気は一生ついてまわるものだが、あの酷い時に比べたら、今は夫がシラフでいる時間が長くなり、それだけで平穏な時間が過ごせている。私の幸せの基準が大幅に下がってしまったのかも知れないが、夫が断酒してくれているだけで、私は安らかな幸せを感じている。

 

ブログを書き始めた頃の文章を読み返してみても、あの頃は切羽詰まっていて、気持ちに余裕がなく、ただただ苦しい文章が綴られていた。夫の状態に回復が見られるようになって来たにつれ、私の気持ちにも文章にも、なんとなく余裕が出てきたような気がする。

 

状態が酷くて悲惨な時ほど、人には話せないものである。

その代わりにここに気持ちを綴って来られたことは、私自身の回復への助けになっていたと思う。

 

ほんの一握りの友人達に話したと言っても、私の生活に直接関わりがあったり、身近な人にほど話すことはできず、そんな人達にはアルコール依存症だという詳細は伏せ、ただ、「夫が病気であり、完治はしない」、ということだけにとどめておいた。

 

そんな彼女達はきっと、「旦那さん病気なのに、旦那さんを置いて日本に行くだなんて、大丈夫なの?」などと不可解に思ったかも知れない。でも、いい状態の時と悪い状態の時があるので、当日にならなければ分からない夫の状態に、いつまでも私達家族が振り回されるわけにはいかず、年に数日間ぐらいは自分達のことを優先させて欲しいと思っている。だから彼女達には、いつかちゃんとアルコール依存症だと話せた時に、そういうことを分かってもらえたらいいなと思っている。

 

そういう詳細が話せなかった彼女達とは別に、夫がアルコール依存症であるという事実をきちんと話せた友人達もいる。そういう彼女達には、一人ひとりに、一対一で話を聞いてもらった。そんな彼女達は、やはり、世間に浸透しているアル中への先入観というものもあり、これが病気なのだということに戸惑っていたようだ。或いは、その戸惑いは、幸せそうに見えていた私と、その家族の実態を知ってのことだったのかも知れない。

 

この病気が他の普通の病気とは違い、人間関係の崩壊や人としての尊厳を奪い、常識が通じない、かなり複雑な病気であるということまでは、もちろん理解などしてもらえなかったと思うのだが、少しでもこういう恐ろしい病気があるのだということを知ってもらい、関心を持ってもらえたら、もう、それで十分だと思っている。

 

そしていつか、アルコール依存症に対する世間の理解が深まってくれたら、今までの苦悩が報われるような気がしている。また、そんな世の中になったら、この病気にならないように節酒を心がける人達も増えて来るだろう。そして、依存症者本人とその家族がもっと生きやすい世の中になり、それがこの病気の回復の手助けになってくれたら、私は嬉しく思う。

 

 

f:id:MrsHope:20190220070050j:plain