離脱症状の真実
2019年、秋。
私達にとって普通になってしまったこの日常を、受け入れることが当たり前になっていた。
今更もう、私が変えられない夫の行動にイライラしても仕方ない。
ただ、心を落ち着かせて、毎日を穏やかに過ごそうとするだけ。
私は今まで夫のことを、アルコール依存症以外に、双極性障害なのだと思っていた。
それで精神科に連れて行こうにも、頑固な夫はそのことに前向きになってくれず、また、私も専門家ではないので、自己流でそう思い込むしかなかった。
何かがおかしいと思っていた。
いくら夫が重度のアルコール依存症とは言え、あの毎度の生死を彷徨う離脱症状は尋常ではない。
精神科医の義兄からは、「これは離脱症状ではないんじゃないか?演技をしてるんじゃないか?」と言われていたのだが、今思えば、離脱症状時に他の病気の症状を併発していたということで説明がつくようだ。(義兄よ、当時はヤブ医者呼ばわりしてごめんなさい。でも、もっと積極的に、進んで話を聞いて欲しかった。)
もし義兄が人づてではなく、実際に夫の離脱症状に立ち会っていたなら、もっと早くに真実が分かっていたかも知れない。
私はいつも、夫からの告白で、夫の身に何が起こっているかを知ることとなる。
夫がアルコール依存症だと知ったのも、夫の告白から。そして、Anxiety(不安障害)があると聞かされたのも、夫の口から。どれも医師の診断によるものではないのだが、夫はいつも冷静に自分の症状を分析して私に知らせてくる。
そしてそんな中、夫は双極性障害ではなくAnxietyであり、かつ、パニック障害もあるということが最近分かって来た。
今まで、何かがおかしいとは思っていたのだが、夫はどうやら、離脱症状時に「アルコール離脱症状」だけではなく、「パニック発作」を併発していたようなのだ。
離脱症状時の過呼吸、呼吸困難での苦しみ、胸の痛み、全身の震え、私はそれらを、離脱症状の壮絶バージョンだとしか思っていなかった。そしてそれは、夫が重度のアルコール依存症だからなのだと思っていた。
確かにアルコールの離脱症状はあり、アルコール性てんかんで何度もERに行き、何度も入院した。
でも夫の離脱症状中の、離脱症状以上の苦しみは、パニック発作によるものだったようだ。
それが分かり、やっと、ずっと疑問に思っていたことへの答えを見つけた気がして、少しホッとした。
ワケの分からない夫の異常な離脱症状がずっと怖かった。
夫が専門家に診てもらってくれてさえいれば、もっと早く真実を知ることができたかも知れないのに、と歯がゆい気持ちになるが、こうやって私達は、手探りでゆっくりと、パズルのピースを合わせるように、徐々に夫の病気の全貌が見え始めて来ている。