理不尽な病 ~アルコール依存症の夫と暮らして~

アメリカ人の夫との結婚生活15年。夫のアルコールの問題に悩まされて10年。アルコール依存症だと認識して約8年。健やかなる時も病める時も、死が二人を分かつまで、私はこうして地獄に付き合わなければならないのだろうか…? 遠い日本の親にも友達にも言えないこの苦しみを、どうかここで吐き出させて下さい。(2018年5月)

あれから3年

夫が断酒して3年が経った日、私は毎年そうしているように、家のリフォームや家具を作るのが好きな夫に、Home Depot (ホームセンター)のギフトカードをあげた。

 

AAに行っていない夫は、断酒記念のトークンや賞状を、どこかでもらえたりするわけではない。だから、Congratulationsと書かれたギフトカードが、私からのせめてもの記念品である。

 

そして義母や義父からもお祝いの連絡が。

これも毎年していることなのだが、私は当日、「今日は断酒して◯年ですよ」と彼らに伝えている。彼らも断酒開始日なんて覚えていないだろうし、そうすることによって夫の断酒を一緒に祝い、夫に「おめでとう!」と言ってもらうためである。

 

大袈裟にならないように、でも、みんな夫の頑張りを誇りに思ってるよ、と夫に分かってもらうために、今年もサラッと軽く祝ってあげた。

 

実際夫も、自分の断酒開始日なんて当初は覚えていなかっただろう。今までに何度も断酒を始め、何度も再飲酒し、この私でさえ、初めの頃はまだしも、最後の方には、夫が断酒を始めても、意気込んで「この日が断酒開始日!」などとは思ったりもしなかった。

 

ただ断酒が長く続くにつれ、「あれ?何月何日から断酒始めたんだっけ?」と気にして、私もカレンダーをチェックし始めた。

 

夫が自分の正確な断酒開始日を初めて認識したのは、私が断酒1年目を初めてお祝いした時であろう。

 

私も、

 

「断酒して◯ケ月だよ!」

「あと1ヶ月で断酒して1年だよ!」

「あと1週間で断酒して1年だよ!」

「明日、断酒して1年だよ!」

 

などとはいちいち報告しなかったので、自分の断酒開始日を私が覚えていたことについて、夫も嬉しかったと思う。それまで夫はただ漠然と、「◯月のこの日辺り」という風にしか認識していなかったはずなので。

 

断酒記念日、それはまるで、生まれ変わった夫の、もう一つの誕生日のようなものである。