理不尽な病 ~アルコール依存症の夫と暮らして~

アメリカ人の夫との結婚生活15年。夫のアルコールの問題に悩まされて10年。アルコール依存症だと認識して約8年。健やかなる時も病める時も、死が二人を分かつまで、私はこうして地獄に付き合わなければならないのだろうか…? 遠い日本の親にも友達にも言えないこの苦しみを、どうかここで吐き出させて下さい。(2018年5月)

アメリカ人の衛生観念

私はアメリカは嫌いではない。むしろ、元々好きだったからこそ渡米して来たという過去がある。

アメリカ人の大らかで適当なところは、良くも悪くも受け入れて来たし、郷に入れば郷に従えで、ここでの暮らしに、自分を順応させてきた。

 

そんな私ではあるのだが、在米歴20年を前に、未だに我慢ならないことがある。

到底理解できない、アメリカ人の衛生観念についてである。

アルコール依存症とは関係ないのだが、それは私のストレスを助長させる、大きな要因となっている。

 

彼らは、家の中を土足で歩くということは言うまでもないのだが、何故か、外では裸足で歩くことがある。室内が土足で、屋外は裸足って!?と、全く理解ができない状況ではあるのだが、彼らはそんなことを深く考えもせずに、ただ、面倒だから、楽だから、等という理由で、そのような行為に及んでいるのであろう。

 

ある夏、娘がまだ小さかった頃、スクールバスの停留所まで娘を迎えに行くと、同じく子供を迎えに、裸足で歩いて来た大人がいた。夏の暑さで温度が上昇したアスファルトの上を、「熱いっ!熱いっ!」と飛び跳ねながら裸足でやって来たこの女性。「靴、履けばいいのに。」と、その不思議な光景に、私は心の中で呟いた。

 

もちろん、街中を裸足で歩く人などいないのだが、裸足で歩くのは家の庭や、家からちょっとゴミを出しに外に出たりするなどの、短時間の間である。恐らく彼らは家の中で靴を脱いで過ごしていて、たまたま外に出る用事があったから、そのまま裸足で外に出ただけなのだろう。

 

ちなみに私達の家は、この辺の地域で一番いい学区にあるため、ご近所さん達も、みんなそれなりにきちんとした人達である。いい大人が裸足で家の外を歩く。そんな光景は、アメリカでは珍しくはないのだ。

 

最近では、アメリカ人でも家の中で靴を脱ぐという家庭も増えてきた。

それでも、日本人のように徹底したものではなく、曖昧でグレーな部分があるのは否めない。

 

今の義母の家では、私の影響か(?)靴を脱ぐということがトレンドになっているのだが、その昔、彼女の家で家族が集合した時、みんなが土足でいる中、彼女は私に笑顔でこう言った。

 

「靴、脱いでいいわよ。リラックスしたいでしょう?」

 

・・・。

 

えっと、みんな靴履いてるのに、その中で私だけ靴を脱いだら、汚いんですけど。(!)

 

彼らには、そういうことが分からないのだ。

我々日本人が室内で靴を脱ぐことも、「リラックスしたいから」、「床に、靴についた泥が付かないから、掃除が楽だから」、という風に思っているのである。

「靴そのものが汚く、不衛生だから。」という理由に、彼らは全く気付いていないようなのだ。

 

土足で家の中を歩き回る文化の中では、赤ちゃんさえも、汚い床の上をハイハイしている。

そして、赤ちゃんは自分の手を口にするのが大好き。

靴を履いた大人達の足元で、嬉しそうにハイハイする赤ちゃんというのは、もう本当に衝撃的な光景である。

 

また彼らは、モール等の公衆のトイレでは、トイレの個室の汚い床に、自分のバッグを平気で置いたりする。アメリカの公衆のトイレの個室は、ドアの下がスッポリ空いていて足が見えるのだが、その足元に置かれたバッグの他にも、スタバ等で買ったプラスチックの容器の飲み物がたまに置かれたりしていることがあり、我々日本人には到底理解できないこの衛生観念には、もう諦めの境地でしかない。

 

そして、アメリカのレストラン等のトイレでよく見かける、「Employees Must Wash Hands(従業員は手を洗うように)」という張り紙。

アメリカ人は、こんなことを言われなければ、トイレの後は手さえも洗わないのだろうか?私の中の常識が、ガタガタと崩れゆく瞬間である。

 

他にも、靴のまま足をテーブルに乗せたり、学校等の廊下に平気で座り込んだり(これは、日本の一部の若者の中で見かけることはあるのだが)。私がアメリカで学生をしていた頃、授業が始まる前に廊下で待っていたアメリカ人の生徒達は、男女共に皆廊下に「あぐら」をかいて座っていた。そんな中で、ただ一人、壁にもたれて立っていた私。

そもそもアメリカ人はお行儀がよろしくないのだが、それは彼らの中では何らおかしいことでもなく、むしろ普通の振る舞いであるので、外国人の私から批判される筋合いもなかろう。でも日本で生まれ育ち、日本で身に着けた行儀作法というものは、私はこのアメリカでも忘れたくはないと思っている。(・・・と偉そうに語る私ではあるのだが、日本ではきっと、私の振る舞いも日本人離れしていて、ガサツに見えることであろう。)

 

外から帰ったら石鹸で手を洗ってうがいをするという習慣も、このアメリカにはない。(ましてや、風邪だからと、または風邪が移らないようにと、マスクをして歩く人などいない。)日本では学校でもそのような教育をしており、風邪や病気の予防の一環として、ごく当たり前の習慣になっている。アメリカの学校でもそのような教育をしてくれればありがたいのだが、そういう習慣がないものだから、アメリカ人は、外から帰っても手を洗わないし、うがいをすることもない。

 

アメリカ人は、アメリカ人は・・・、と、私が思う彼らの残念な部分をかなり書いてしまったが、これぞ文化の違いというものであろう。

そして文化が違うと、彼らに私の心情を、根っこの部分で理解してもらうことは、根本的に無理だと思う。

 

だから、アメリカ人のアラノンには行きたくない。

 

「夫が泥酔して、土足で家の中を歩き回ったんです!」と彼らにこの憤りを訴えたところで、彼らからは、「それのどこがダメなの?」という、ポカンとした反応しかないだろう。

 

私がいつか、もしアラノンに行かなければならないような状況になったとしたなら、その時は、同じ文化の中で生きてきた、日本人が集まるアラノンに行きたい。

(もしこのアメリカに、日本人が集まるアラノンがあれば、参考までにどなたか教えて下さい。)

 

もちろんアメリカ人にも、我々日本人が学ぶべきいいところは沢山ある。

 

私が好きな彼らの国民性は、「見ず知らずの他人であっても、昔からの友達のように、親しく、優しく、親切である」というところ。日本人は、知り合いには優しいけれど、自分に関係ない他人には冷たい、というところがないだろうか?だから、日本人は道で知らない人にぶつかっても謝らないし、知らない人のために、(緊急の時以外は)ドアを押さえてあげることもない。道端で人が困っていても、知らない人だから見て見ぬ振り。

 

そういうところが、日本人とアメリカ人では、真逆だと思っている。アメリカ人は、知らない人にちょっと触れただけでも、必ず謝ってくれる。知らない人のために、ドアを押さえていてくれる。道端で人が困っていたら、必ず誰かが声をかけてくれる。

 

そういうアメリカ人に私は敬意を表し、そんな彼らのいいところにも目を向けながら、私はアメリカでのこの生活を、今、精一杯生きている。

 

 

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セキュリティカメラが捉えたもの

我が家には、セキュリティカメラが数台設置してある。

防犯のためというより、昼間みんなが不在中に、犬達がどう過ごしているのかを見たいという、遊び心で設置したものだ。

 

犬達は、私達が外出から帰って来ると、必ずベイウィンドウ(出窓)に座って外を眺め、私達の帰りを待っている。

果たして私達が外出してから一日中ずっとそこにいるのか、それとも、私達が想像だにしていないことをしているのか、誰にも犬達の一日の様子は分からなかったのだが、カメラのお陰で、彼らの実態が判明した。

 

『彼らは、私達の不在中、ずーっとベイウィンドウに座って外を眺め、私達の帰りを待っている』

のだ!

 

目新しくもない発見ではあるのだが、カメラのお陰で、私は日本からも家の様子を確認することができた。

 

犬達のご飯やお水の有無のチェックをし、時々犬達にカメラ越しに話しかけて、反応を楽しむ。

 

当然、夫の様子も確認する。

 

最初の1週間は、私達の不在を利用し、リビングの家具を全部動かして、床を綺麗にコーティングする作業を甲斐甲斐しくやっていた。これから壁も、ペンキを綺麗に塗り直すと言う。

シラフの夫は、それはそれは、頑張って家のリノベーションに精を出していた。

 

そして2週間目。

実家の別の部屋にいた娘が、私にテキストしてきた。

「お父さん、飲んでると思う。変なテキストが沢山来るし、送られてきた動画も、声が酔っぱらってるし。」

 

娘がそう言うのなら、きっと本当に飲んでいるのだろう。

彼女も私同様、夫の飲酒を100%察知する能力を持ち合わせているのだ。

 

あれだけ、一口でも飲んだらまた堕ちて行くと学んだはずなのに、あの夫は、一体いつになったら飲まないでいられるんだろう!?

 

病気だから仕方ないとはいえ、つい、私もこの病気の知識がない人達が発してしまいそうなことを思ってみる。

 

スマホで家のカメラをチェックしてみた。

 

「ピーッピーッピーッ」

「ピーッピーッピーッ」

 

・・・!?

 

何やら警報器みたいなものが鳴っている。

 

え・・・火災報知器!?

 

それは延々と鳴り響き、そしてカメラは、泥酔してヨタヨタ歩く夫の、ゾンビのような姿を捉えていた。

 

とっさに、地元の消防署に国際電話をすべきか、どうすればいいのか、一瞬迷ってしまった。

 

私はすぐさまその映像を録画し、義父と義母にそれを送って事情をテキストした。

アメリカは昼の時間だったため、返事はすぐに来た。

そしてその直後にカメラをチェックすると、火災報知機の音は消えていた。

 

夫が単に、火災報知機を止めただけなのか、それとも、原因である何かもちゃんと消したのか、こちらでは分からない。

 

義父に、仕事が終わったら様子を見に家に行ってもらうようにお願いをした。

 

その後の義父の話によると、原因は、何か料理をしていたものが焦げてしまい、その煙に火災報知機が反応したらしい。

酔った夫は火(正確には電気)をつけたまま、そのまま眠ってしまったのだろう。

 

酔っ払いが料理をするのは、本当に危険なことである。

今までにも、飲んでいた夫がオーブンをつけっぱなしにして、そのまま眠ってしまったことがある。

 

料理だけでなく、真冬に犬を庭に出しっぱなしにして、本人は酔っぱらって眠ってしまったこともある。正確な時間は不明なのだが、もしかしたら4時間程、そのまま外に出しっぱなしにしていたのかも知れない。可哀想に、寒空の下で犬は一人で、ドアの前でずっと、扉が開くのを待っていた。(二匹のうち、一匹だけを外に出しっぱなしにしていた。)

 

他にも、酔っ払って普段しないようなことをして、迷惑をかけられたことは数知れず。

 

夫と離れて日本でゆっくり心と体を休めるのはいいのだが、そういう不在時の心配事が、日本にいてもふと頭をよぎる。

 

カメラは、他にも私に嫌なものを見せてくれた。

別々に家にやってきた義父と義母。

彼らは、靴を履いたまま我が家を歩き回っていた!

 

義父にそれをやられても、それほど怒りの気持ちは沸いて来なかった。私がいる時に、今までにも何度も土足で歩き回られたことがあるので、今更腹も立たなかった。

 

問題は、義母である。

私がいる時には、いつもちゃんと靴を脱いでくれていた彼女は、私がいないのをいいことに、靴を履いたまま歩き回っていたのだ。これには私は非常に腹が立った!私の気持ちを尊重してくれず、私がそこにいないのをいいことに、靴を脱がないだなんて!思わず、カメラ越しに「Take off your shoes!!!(靴脱いで!)」と叫びそうになった。でも、後々また面倒なことになるのは避けたかったから、結局私は何も言わなかった。カメラがなければ知り得なかったことではあるし。

 

そんなこんなで、今回の日本滞在中にも、アメリカにいる困った家族達は、地球の反対側から私をハラハラドキドキ & イライラさせてくれた。

 

 

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春を待ちながら

夫は2019年の目標として、アルコール依存症からの回復、そして、社会と仕事に復帰することをあげている。

 

期待をしても、今までに何度も失望させられてきたから、私はそれをただ黙って聞いている。

それでも、彼の前向きな気持ちを聞いて少し安心する。

仕事復帰にまでは辿り着かないかも知れないが、今はただ、断酒を続けて行って欲しい。

 

この病気の進行に、これだけの長い年月を費やしてきた。

回復にも時間がかかって当然なんだと、そんな風にゆったりと構えながら、これからも毎日、One day at a time(1日ずつ)で夫の回復、そして私と娘の回復を目指して、ゆっくりとでも前に進んでいけたらといいなと思っている。

 

夫が断酒を再開して、36日が経ちました。

 

 

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