ウォッカ

夫はウォッカを好んで飲む。
1.75リットルの大瓶を、二日で飲み干してしまう。
一旦お酒が入ると、私達の生活のすべてが壊される。数々の暴言を吐かれ、無意味に絡んで来られ、就寝の邪魔をされ、夜中に何度も起こされる。一晩中寝られないことは何度もあった。一睡もせずに、翌日会社に仕事の面接に行ったこともあった。泥酔した夫から離れるために、娘と犬達を連れて親戚宅に泊めさせてもらったこともある。娘だけ親戚宅に泊めさせてもらったことは何度もある。警察を呼んだこともある。とにかく飲むと夫は、まともな人間ではなくなるのだ。

このウォッカの瓶３本目が空になる頃、連続飲酒が一週間にもなると、ついに普通に立つことができなくなる。移動は床を這うか、体を重たそうに揺らしながら、ゆっくりと、ふらふらとゾンビのように歩く。ここまで来ると、もう異様な、異常な世界である。

夫の意志で、夫の選択によってこうなってしまうのは自業自得であるが、私達の意志に関係なく、私達がしていない選択によって、このような異常な生活を強いられるのは、まったく理不尽だとしか言いようがない。アルコール依存症の家族は、いつもこの理不尽な病と向き合っているのだ。