Relapsed(再飲酒)
夫の断酒が止まった。
週5日AAに参加し、そしてそのAAの帰り道、ウォッカを買ってしまった。
私はその夜、すぐに微かなその香りに気が付いたのだが、確信が持てなかった私は、それは気のせいだと思うことにした。
でもその晩の夫の寝入る姿は、飲酒時のそれと同じだった。
不自然な恰好で、床で寝転がっている夫。
そしてその次の日の夜も、夫は床で、同じ姿で寝入ってしまった。
それでも私は、夫がアルコールを飲んでいるかも知れないという可能性を考えないようにしていた。・・・というより、考えていなかった。
その日、特にアルコールの匂いに気付いたわけではなかったからだ。
AAにも行ったし、夫の様子におかしいところもなかった。
私はシラフの夫に慣れ始め、いとも簡単に堕ちて行くアルコールの威力に鈍感になっていたのかも知れない。
その次の日の朝、私は夫から送られてきたテキストを見ていた。
"I'm sorry _____ , I drank" (ごめん(私の名前)、飲んでしまった)
"Please don't tell everybody" (どうかみんなに言わないで)
"I called _____ and told him about it"( に電話をして、その話をした)
それは特に私を失望にはさせなかった。
いつか飲むだろうということは分かっていた。
むしろ、自分から飲んだことを告白してくれて良かったと思っている。
飲み始めてすぐ、夫はAAの仲間数名に電話をして話を聞いてもらっていたようだ。
飲んでしまっても、このように相談できる相手と知り合えたことは私を安心させた。
(本当はアルコールを買う前に、飲酒欲求があった時に電話してくれればよかったのだが。。)
「飲んでしまってごめんなさい。」
そう言いながら床に座って壁に寄りかかり、夫は顔を両手で覆って泣いた。
私も泣いた。
「いいよ、こういうことってあるんでしょ?また一からやり直せばいいよ。」
今回の断酒期間は25日。
夫は頑張っていた。
泣きながら、私は夫をそっと引き寄せた。
夫が正気だったのは、この時が最後だった。
一旦飲み始めると、どんどん堕ちて行き、廃人同然になってしまう。
久しぶりの飲酒だから、飲むペースは少し落ちたような気はするものの、それでも大きなウォッカのボトル3本がすぐに空になった。
今回の夫は、泥酔時の暴言は全くなかった。
再飲酒したことがショックだったのか、夫はずっとおとなしかった。
無言で、何も食べず、首をうなだれて床に座り込む夫の姿を見るのは、本当に辛かった。
それでも就寝時に酔っぱらったまま私に寄りかかって眠り、いくら頼んでもダランとして動こうとしない夫が重くて腹が立ち、さっきまでの涙のあのシーンは一体何だったのか、私は夫に暴言を吐いてしまった。
どんなに心を落ち着かせようとしても、今までのストレスの蓄積というものは計り知れない。ほんの小さなことがキッカケで、フタをしていた夫への負の感情が爆発してしまう。
シラフで暴言を吐くだなんて最低である。
夫は何も言わなかった。
そんな夫を残し、私は犬達を連れて別の部屋で寝た。
ただただ、おとなしく飲み続ける夫。
そのうちに死んでしまうのではないかと、私は心配した。
早く離脱症状が起こりますように。
病院に行かないのであれば、夫が正気に戻るには、それしか方法はないのだ。