親心
夫の連続飲酒中は、気をしっかり持つべく、私自身のために楽しいことをしようと思ってはいても、何だかんだで気分が沈む。
同じアルコール依存症でも、夫が働いてくれているなら、どんなに家族の気持ちが楽になるだろう。こんな底辺の生活にも慣れてしまったが、仕事もしていないアルコール依存症の夫なんて、世間から見たら、とんでもないルーザー、ろくでなしである。
私、一体何にしがみついてこんな夫と一緒にいるんだろ?
人として、夫として、尊敬などできるわけがない。
「Move on!(気持ちを切り替えて前に進め)」、と悪魔の、いや、天使の囁きが聞こえてくるようだ。
夫は働くことができない。
シラフの時は、時折自らセッセとランチを作り、義父の仕事を手伝いに行っているのだが、別に雇われているわけでもない夫は、飲み始めると平気で仕事の約束をすっぽかし、家に籠って連続飲酒を始めてしまう。
連続飲酒は約1週間続き、朝から晩まで一日中、寝ている時以外は食事も取らず、機械的にずっと飲み続けている。普通の人のように規則正しい生活をすることは、飲酒している限り、無理である。
夫はそんな自分自身のことを、一体どう思っているのだろうか?少なくともルーザーなどとは思ってもいないだろう。いや、そういうことを態度に出さないまでも、夫は、堕ちた自分自身のことを想い、きっと悔しい思いをしているのではと思う。たまに夫は弱い面を見せてくれる時があるのだが、一度、「アルコールで沢山のものを失った。自分のキャリアも・・・。」と、涙を流していた時がある。夫のそんな姿を見ると、強がってはいても、彼もやはり深く傷ついているのだとせつなくなり、私も一緒に泣いてしまった。
こんなに家族を大変な目に合わせている夫のことは、憎いけど憎み切れない。
私の中の夫への情が、私を彼から離れさせない。
それがもう愛なのか何なのか、分からなくなって来てしまったが、修羅場はあっても、やはりお互いがお互いを必要としているのだと思う。
まさに共依存である。
アルコール依存症の家族という病にどっぷりと浸かってしまい、私自身も気分のアップダウンが激しくて、しんどくなる。
もっと早く、夫のことを見捨てていれば良かったのかな・・・。
生まれ変わったら、もう酒呑みとは結婚しない、などとメルヘンなことは言わない。
私のことはどうでもいいのだが、これだけは娘に言っておきたい。
「どうか、酒呑みとだけは結婚してくれるな。」
「もし将来結婚して、あなたの夫がアルコール依存症になったら、いらない苦労はしなくていいから、もうお母さんの所に戻っておいで。」
そんなことを思いながら、日本にいる私の両親も、きっと私に同じことを言うだろうな・・・と、一人そっと涙を拭っている。