嘘のいいわけ
夫の病気のせいで私の時間が奪われても、周りに本当のことは言えなかった。
私が仕事中、何度か夫の離脱症状で会社を休んだり早退しなければならなかったが、会社には仕方なく嘘の理由を言うしかなかった。「夫がアルコールの離脱症状で・・・・」というより、「娘が熱で・・・」と言う方が、まだ普通に受け入れて理解してもらえると思ったからだ。その時は娘に本当に申し訳なく思い、そして夫のことを情けなく思った。
また、娘の学校が休校日に、酔っ払った夫と娘を二人きりで家に残すわけにはいかなかった。酔っ払いの対応を娘にさせるわけにはいかないからだ。
一度娘が10歳の頃、離脱症状が起こっている夫と娘を二人きりにしてしまったことがある。詳しい状況は覚えていないのだが、おそらく娘の学校が休校日か半日の日に、いつもなら学校のチャイルドケアか親戚宅に預けるところ、夫が自宅にいたのでそのまま娘を家に残して私は仕事に行ったのだ。離脱症状が起こると分かっていたら、娘と夫を二人きりになんかしなかった。いや、シラフでない、夫がアルコールを飲んでいると分かった上で娘と夫を二人きりにしたのは、私が犯した大きな間違いだった。
私が仕事から帰宅すると、娘が号泣して私に飛び込んできた。「パパがずっと苦しいって言って、ずっと私に死ぬ!死ぬ!って言って、私の前で死んだふりをしたの!ずっと動かなくて、死んだと思った!どうしようかと思って怖かった!」と言って大粒の涙を流していた。私は目の前が真っ暗になった。娘を夫の離脱症状に付き添わせてしまっていたのだ。胸が痛んで娘に謝り、娘をこんな目に合せてしまった自分の過ちを後悔した。
そしてそれ以来、私は夫が飲んでいる時や離脱症状が起こりそうな時には、娘と夫を二人きりにすることをやめた。そしてそういう時には私は会社を休み、娘のために家にいた。こうして私の働く時間が、アルコール依存症の夫のせいで奪われた。