義理の兄と妹
夫の兄は精神科医だ。でもだからと言って夫の病の助けになったことなど一度もない。むしろ、失望しかない。違う州に住む義兄は年に数回家に来るのだが、でもだからといって積極的にアルコール問題について夫に問いただすわけでもない。アメリカ人が大好きな政治の話やたわいもない話をただ普通にして、何事もなかったかのように去っていくだけ。「アルコール依存症は、弟個人の問題だから自分には関係ないってこと!?」と、私が非常に腹立たしくなる瞬間だ。
一度、会社から切羽詰まって義兄に電話をしたことがある。会社に何度も泥酔した夫からの異常な電話やテキストがあり、連絡が取れなかった義父母の代わりに、義兄に夫を遠ざけて欲しかったからだ。でももちろん義兄も仕事中であり、電話が通じなかった私は留守電にメッセージを残した。そして何度もテキストした。それなのに、義兄からの返信や折り返しの電話は一度もかかっては来なかった。その後義母から聞いたのだが、義兄は私のことを「可哀想に・・・」と言っていたそうだ。それを聞いて私は酷く腹が立った。そんな、「可哀想に」っていうことを義母に言うのではなく、ちゃんと返信なり折り返しの電話なりで、私に直接言って欲しかった。私が求めた助けを、無視して欲しくなかった。
夫の妹も、兄と似たようなものだ。
夫の妹とは年に数回会うのだが、今までに一度たりとも彼女から夫のアルコール問題について聞かれたことはない。彼女もまた、何事もなかったかのように普通の会話をするだけなのだ。前に一度、義母に「なぜ妹は夫のアルコール問題について一度も何も聞いてこないのか?」と聞いたことがある。すると少しバツが悪そうに、「彼女は自分の子供たちのことで手がいっぱいだから・・・。」と言っていた。もともと夫も妹も仲は良くなかったのは知っているが、ここまで妹から無関心な態度を取られるのは、私は全く理解ができない。
義兄と義妹の非情な態度に腹立たしく思うと同時に、彼らから親身になってもらえない夫のことを、私は可哀想に思っている。こんなに酷い夫でも、やはり私は夫に対して愛情があり、彼のアルコール問題を何事もなかったかのように無視されるのが嫌なのである。
兄や妹との薄い絆は、アメリカ人の個人主義ということ以外にも、さかのぼると、義父母間の薄い愛情が影響しているのかも知れない。あの義父母の関係が破綻に至った過程で、あの家族そのものが崩壊してしまったのだとしたら、もう彼らに何を望んでも無駄であろう。