苛立ち
夫が仕事を辞めて6年にもなると、さすがに夫の貯金も底をつき、私にも家のローンを負担するように言ってきた。そう、それまでこの生活を支えていたのは、老後の資金を含む夫の貯金で、私は家のローンや生活費は払ってはいなかったのだ。
夫に言ったことがある。
「今のあなたを受け入れていられるのは、あなたがヒモじゃないから。」
これは全くの本心で、もしローンが払えなくなり、家を売らなければならなくなったら、その後の私の人生に夫はいなかっただろう。私が夫と一緒にいるのは、家があり、夫が私達の生活費を払っているから。私の夫は、たとえ働いていなくても、大黒柱のごとく、私達の生活を支えてくれている。それが私の唯一の、夫への誇りだった。
それがなくなったら、もうこんなグータラな夫とは一緒にはいられない。
毎日自由気ままに遊んで暮らしていた夫へは、もうそんな気持ちしかなくなっていた。
でもさすがに私のその一言は夫を傷つけたらしく、「そんなことを言うなんて失礼だ!君は僕のことをATMとしか思っていない!やっぱりお金目当てなんだ!」と言った。
私にそう言われた夫の気持ちを考えると、なんて酷い妻なんだ!という気持ちも分かるのだが、私の立場に立つと、働かずに毎日ダラダラと好きなことをしている夫と6年も一緒に暮らしている苦しみと苛立ちは、大抵の人には分かってもらえるんじゃないかと思っている。
アルコールを飲んでいない夫と一緒に暮らすのは、呑んだくれていた日々を送っていた頃に比べたら、本当に雲泥の差で気持ちが楽で平和だった。
でも、一刻も早く夫には働いて欲しかった。
来年には娘も大学生になる。
貯金もない。
私達には、今まで以上にお金を得ることが必要だった。